りっかのブログ

イケ奥の腹黒狸最愛♡ひたすら萌えを綴るためのブログ。基本ネタバレ。愚痴批判あり注意

「種蒔く人」序章、1話

主人公の名前は公式小説にあわせて「茜」です。
 
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「種蒔く人」
 
 
(序章)
 
ここ江戸城が誇る、豪華絢爛な美男子の園ー
 
その「大奥」の司令塔とも言える大奥総取締役の任に就く者ー「お万の君」こと永光は、
眉間に深いしわを寄せ、苛々と視線を彷徨わせながら廊下を歩いていた。
 
歩いていたーーー?
 
「あ、永光。ちょうどいいところにーー」
 
今夜の酒盛りの相手を探していた御門が、話しかけようと手を振り上げた時には、すでに永光は畳10枚分ほど先をものすごい速さで通り過ぎていた。
 
「いつの間に忍者ばりの早歩きを覚えたわけ…?」
 
ぽかんと口を開けて呟く御門の呟きは、誰に届くともなく虚空に吸い込まれていった。
 
 
 
ーーー
 
 
 
(第1話)噂話
 
 
時は半刻ほど遡る。
 

「やけに焦ってたな」

「ふふっ、それに何だか嬉しそうだったよね」
「よくあれで江戸城の上様が務まるもんだな」
 
親しげに話す二人組ーー麻兎と火影が通り過ぎようとしていた茶室で、
永光は、その聞こえてきた声に耳をすませた。
 
「なんかさー、今日は朝から上の空だったんだ。座学の途中も、春日局様に春の陽気にあてられたなんとかとか言われて、やんわり叱られてた」
「真面目なところが取り柄なんじゃなかったのか?」
「うん。だから珍しいんだ。こういうことってあんまり、ないんだけど」
 
静かに、素早く襖を開けると、永光は二人の背中に声をかけた。
「それはどなたのことですか?」
 
「あれ、永光様がいる」
意外そうな顔で火影がひょいと振り返った。
「てっきり、今頃待ち合わせでもしてるのかと思ったけど?」
麻兎はにやりと笑うと、面白いことを知ったと言わんばかりに興味深く永光を見た。
 
「彼女のことですね?火影くんは、どうしてここに?」
「それが…」
任務をさぼっていると思われた気がしたのか、少し気まずそうに頭をかく。
「今日は護衛はいらない、って言うんです。城下にちょっとした用事で行くだけだからって」
「俺もだ。途中で出くわして声をかけたけど、断られたな」
「まぁ昼間だし、誰かと会うようだったから、心配はないと思うけど…」
 
「誰かと…会う?」
永光の顔が曇る。
「今日は雨が降りそう、って言ったら、傘を二本持って行ったんだ。いつも忘れるからって…あれ、てっきり永光様と会うと思ってたけど、よく考えたら永光様が傘を忘れるなんてあんまりないですよね」
 
「…」
永光が黙って逡巡するように軽く腕を組んだのを見て、麻兎が横でにやっと笑う。
「そういやぁ…今日は化粧も一段と気合いが入ってた気がするな」
「麻兎、やめなよ」
すかさず火影が窘めようと手を出すが、その手をぱしっと払いのけて眼帯の男は飄々と笑った。
「イイだろ?たまには俺が永光をいじめても」
 
「うわぁ…二人とも性格悪いとこそっくり」
「そっくりじゃ」
「ない」「ありません」とそれぞれ語尾まで綺麗に唱和した二人に同時に睨まれて、火影はあぁと嘆息した。
(茜様の気苦労は、俺が少しでも軽くしてあげなきゃ…だね)
 
 
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(2話に続く)